発達障害の人は、基本いつも疲れている。

筒井康隆さんの「傷ついたのは誰の心」という短編がありまして。主人公が、悪徳警官に妻を強姦されたり、カミソリで眼球を切られたり最後は撃ち殺されたりと散々ひどいことをされるんですが、なのに、実は一番傷ついたのはその警官だったのだ、と主人公は死の瞬間考える…。そんな、不条理な小説です。

 

はい、今のハナシは本編とはほとんど関係ございません「えっ」

 

関係は無いのでございますが、実は私、以下にご紹介致しますシリーズマンガを読みまして、

「結局、最終的に一番傷ついたのは、離婚した元旦那さんなのではないか?」

と思った次第でございます。

 

離婚の話し合い。元旦那と最後の会話《心の大掃除13》 - コミックエッセイ-モノクロ家計簿

 

元旦那はアスペルガー症候群だったかもしれない《心の大掃除15》 - コミックエッセイ-モノクロ家計簿

 

 

このマンガの読者の方は、ひっくりかえるかもしれません。なぜ、この流れで、元旦那さんが一番傷ついた、ってなるの?!((((;゚Д゚)))))))

 

別に私は筒井先生ばりの不条理バナシをやりたいわけではございませんで、ちゃんと理由はあります。すべては、パート15がいけない。これがなかったらよくある日常系つらいことがあったよ共感してねマンガと同じく、変なオトコに振り回されて困った、というハナシだけで終わったのに。

 

(そして、そこで終わっておけばその先、読者が勝手にアスペルガー症候群なのでは?と推察する分は作者の責任の範疇外なのに)

 

余計なおせっかいですがこのシリーズ、このままでは非常に危険であります。なぜかと申し上げますと、要は読者によっては「アスペだから」とまるでアスペルガー症候群を悪者にしているかのような印象を持ちかねない書き方をしているのに、肝心の”アスペルガー症候群とはなにか””アスペルガー症候群への対処の仕方は”といったところを

 

※アスペっぽいと思って上げた行動ですが、私は特にそこまで特定しようと思って調べていませんので、間違えてることはあるかもしれません。

 

とか

 

特に私は立ち向かわなかったので何とも言えません

 

と、完全に読者丸投げで終わっておりますので非常に印象が悪く、悪くしますと患者さんや支援団体の方に、無責任に偏見を煽っている、とおこられてしまう危険があるわけです。

 

別に他人の炎上は蜜の味なのでもっとやれー、もっとやれーと囃し立ててもよいのでございますが、それも少々かわいそうなので、この危険なコンテンツを安全なコンテンツに変えるための提案といたしまして、このパート15をまるまる削除するか、もしくは、アスペルガー症候群についてもう少し突っ込んで書いて予防線をきっちり張ってはいかがでしょうか、というところです。「私はよく知りません」というだけでは、この問題に対しては、予防線としてやや弱いのです。

 

f:id:yokokaracc:20181217211044j:image

 

細かいハナシですが、私、ここまでの文章の中では、(この作者さんがそう書いているから)この作者さんの発言紹介の中だけで「アスペ」という単語を使用し、私自身の発言としては「アスペルガー症候群」とわざわざ書いております。これは、現在のネットスラングでは次第に「アスペ」と省略した言い方がほぼ差別語的に使用されつつあるので、そこへの配慮、「アスペという単語を使っているのは私ではありません、この作者さんです」という予防線です。そういう、細かい配慮が必要な問題であることを理解されてはどうでしょうか、というところまでで、おせっかいを終了させていただきたく存じます。

 


 

さて、ここまでで既に、リンクも含んで1400字を越えています。どうしましょう。まあ、どうもしませんが。

 

先のおせっかいも別に専門家に取材してディープに調べろってわけでなくネットの情報をうのみにして横流しすればいいだけです。そう、今ハヤリの、コピペってやつですね。時代の最先端です。

 

というわけで、私もさっそくコピペです。

発達障害は、発達障害者支援法により定義付けられ、主に広汎性発達障害学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害の3種類に分類されています。 自閉症アスペルガー症候群は広汎性発達障害に含まれます。

【発達障害とは】分類・特徴・軽度発達障害

 

アスペルガー症候群が(ネットスラング的に)認知されると共に、ADHDという言葉も認知されてきました。この二つは症例の分類的にはちがうものなのですが、併発してるケースも多々あります。そして実際にどちらかが原因で社会への適応に悩んでいる人にとっては、最大の問題は、共通しています。

「脳のワーキングメモリーが足りない」という点です。

 

一つのことに過度に集中するのも逆にいろいろなことが気になって全く集中できないのも、基本的に同じ原因から来ています。ワーキングメモリーの不足です。ワーキングメモリーが足りないから一つのことに過度に集中してしまう、あるいは逆に、別な物事にすぐ気を取られ集中力をなくしていまう。

 

そういう言い方をすると、ですね。すぐに職場の使えない人の実例を思い浮かべては「あー、やっぱりあいつアスペなんじゃん、アスペ=ダメ人間じゃん」と短絡的な結論を下すアタマの弱い方が多うございます。ところが、実は発達障害者の中には時々、異常に仕事ができる人間がいます。

 

突発事態に臨機応変に対応できないから、ち密な障害対応マニュアルを作成する。部下にいいかげんな報告されても「柔軟に理解」なんかできないから、ガチガチのフォーマットでの報告を強いる。要は発達障害者が職場のルールを勝手に作れる権限と思考力、そして行動力をもっていたら、柔軟性ゼロのガチガチのルールをこと細かに練り上げて部下をギリギリと締め上げて猛烈に業績をあげることがあるわけです。

 

ワーキングメモリーが足らなくて困るのだったら、ワーキングメモリーなんか足らなくても困らない環境を作ってしまえばいい。そういう環境整備さえできれば、途方もないパフォーマンスを発揮する人が、発達障害者には多いのです。

 

それを実行できるだけの能力を持った発達障害者を、私は、社会に過剰適応した、「発達した発達障害者」と呼んでいます。

 

「よく発達した発達障害」の話 - シロクマの屑籠

 

なにがいいたいかと言うと、「発達障害者=ダメ人間ではない」ということです。

ネット上でアスペ、アスペとバカにしてる人の中には、もしかしたら、知らないうちにリアルで、超有能な発達障害者の上司にひどくこき使われている”無能な健常者”が、いるかもわかりませんね。

 


 

ようやく本題です「えっ」

 

もちろん上記のような超優秀な発達障害者はひと握りでしょうが、そこまで行かなくても自分の能力をとことん磨き上げて実績を上げつつ、発達障害ゆえの弱点はうまくカバーして社会に適応している方は多うございます。

 

ところが、それって凄く疲れることなんです。

 

金スマ「発達障害」頑張りすぎることの代償を見た~二次障害~ - ことりのかけら

 

一口に発達障害者といっても色々な性格の方がいらっしゃいますが、臆病で神経質なタイプの人はたいてい、ビクビクしながら社会生活を送っています。なにか忘れてたり人の言葉を誤解したりして、とんでもない失敗をしようとしてはいないか。ビリビリと緊張して何度も自分の行動をチェックしています。

 

そのために、少ないワーキングメモリーを常にフル回転させています。コレが疲れるんです。

 

一方おおらかであまり気にしないタイプ(勿論このタイプが多いのは事実)にしたって、この世の中は不条理に満ちています。なぜ、この人たちは私に対して、こんなに怒っているのだろう?

いちいち気にしてたら身がもたないや、いつものように、受け流して忘れてしまおう。(←当たり前ですが配偶者にこういう態度を取られれば多くの人は怒りますが、発達障害の人からすれば身を守るための当然の防衛反応)

 

だけど、それにしてもなんで、こんなに怒られなきゃならないんだろう?

 

この疑問を一回も感じたことがない発達障害者が、果たして居るのだろうかと思ったりするわけです。

コレはコレで、やはり大変疲れることなのでございます。

 

足が無い人に走れ、ジャンプしろ!なんて誰も言いませんし言えば凄まじい非難を浴びるわけでございますが、見た目ですぐにわからない障害にはいくら無茶な要求をしても良いというのが、この社会の流儀のようでございます。他人の指示や要求、感情の機微を理解する能力が不足してる人間に「理解しろ」「理解できないのは根性が足りん」などというのは、びっくりでございます。

 

先のマンガの元旦那さんですが、多分、自分がなんでこんなに怒られなきゃいけないのか、全く理解できていないと思います。そして、それがまた余計な怒りを誘うわけなんですが、そもそもあなたたちは、

理解不能な理由で親しい人たちから延々と攻撃される日常というもののつらさを体験したことがあるのでしょうか?

 

理由がわからない攻撃、理解ができない叱責。それがどれだけつらいことなのか、リアルに想像できますか?

 

それが出来ないうちは、この元旦那さんを、非難するどころかマンガのネタにする権限などないのではないかと、発達障害者自身や支援団体の方などからは非難されても不思議ではないのではないかと推察する次第です。

 

さて、傷ついたのは、誰の心?