トシちゃんとマッチの萌えマンガ「ワン・ノート・サンバ」。書いたのは…竹宮恵子先生だ!
ジャニーズに萌える腐女子のみなさまにおかれましては、彼らをキャラクターにした萌えマンガを描く、なんてことは至極当然のことでございましょう。
ただ書いた人が問題。
なのでジャニーズアイドルの源流といえるレジェンド・田原俊彦さんと近藤真彦さんが出てくる萌えマンガ、なんてのは、あっても不思議とは思わないでしょうね。
ただ、書いた人が問題です。大いに問題アリです。
漫画の未来のために種をまく 竹宮惠子 (漫画家、京都精華大学学長) WEDGE Infinity(ウェッジ)
竹宮恵子。少女マンガ界のレジェンド中のレジェンド。そもそも少女マンガというジャンル自体を作ったひとりといっても過言ではない、かつ最初から少女マンガというジャンルを超えたスケールの大きい、革命的な作品を産み出してきた伝説のマンガ家です。
突然ものすごくものすごく脱線なのですが、実は竹宮恵子さんの著作権管理をしている会社は現在なぜかあの朝倉市にあり、その関係で現在、朝倉市の「ふるさと納税」の返礼品として直筆サイン入り『風と木の詩』画集「少年の詩」がいただけるようです。興味のあるかた、またふるさと納税で被災地を応援したいというかたはとりあえず以下のページをご覧ください。
BL界のレジェンドでもある
「地球へ…」のような壮大なSF作品を世に送り出す一方、全寮制の学園を舞台に少年たちが愛欲に苦しむ姿を描いた同性愛マンガの元祖「風と木の詩」で、世の中に衝撃を与えました。
何故に衝撃かというと、あらゆるマンガの中で当時”このジャンル”は、全く描かれていなかったのです。てか少女マンガでベッドシーンを描くだけでも常識破りだったのにさらに、男と、男…(´・_・`)
でもこの作品のおかげで大勢の人が「あ、描いちゃっていいんだこういうの」って、思っちゃた。
それまでになかった、ひとつのジャンルを作り出してしまった「風と木の詩」。BL、という隠れた、喚起される前は全く見えなかった需要に対し、供給を作り出したことの経済効果ももっと評価されるべきじゃないかと思います。
見えない需要に供給を作り出す大変さ
『風と木の詩』の竹宮惠子 萩尾望都への嫉妬に苦しんだ日々│NEWSポストセブン
編集者が怒りの形相で現れた。
《「お前ねー、普通の女の子と男の子が好き合う話ですらわけがわからなくて困ってんだぞ、俺は。それを女の子が好きな、男の子と男の子の微妙な友情って、いったい何なんだよ。ボツだ! ボツ!(後略)」》
リンク先ではこのやり取りに「腹を抱えた」とあるんですが、何が面白いのかわからない(´・_・`)いやコレ深刻なハナシだと思うぞ、当時の男性中心目線のコンテンツ産業の、女性ニーズに対する無理解さ。要は「わけがわからなくて困ってる」人たちが象をなぞるようにてんで的はずれなコンテンツを一方的に供給してたわけです。
それに対して女性目線から的確なニーズを提案すると「ボツだ!ボツ!」…まったく、こんな状態からよく「風木」を世に送り出せたよな、としみじみ感心します。
「ワン・ノート・サンバ」
で、ようやく本題です「えっ」
しかしこの作品「ワン・ノート・サンバ」は実のところ、「トシちゃんとマッチがモデルなんやで」と教えてもらわないと、ごく普通のウェルメイドの短編マンガとして、読み飛ばされてしまいそうです。
以降、ネタバレあり。
全米ヒットチャートのトップアイドル、ティエリー・ラグ。しかし彼は新人アイドル、ギィ・フレイクの猛追にその地位をおびやかされ、悩んでいた。最新曲「グローイング・アップ」も、ギィの「タッチ・ダウン・フォー・ユー」にあっさり首位を奪われてしまう。
「来週は絶対ガッツでがんばります!」とカメラに向かって笑顔で舌を出すティエリーだったが、内心は壁にぶつかっていた。幼なじみでもあるギィは屈託無くティエリーに接するがティエリーはいたたまれず、とうとう、失踪してしまう…。
ヒッチハイク先で出会ったファーラという女性にいざなわれ、ティエリーはさまざまな出会いを経験する。感性豊かな大人たち、そして「ワン・ノート・サンバ」という名曲…。新たな出会いに刺激を受け新たな自分自身を見出したティエリーは、ギィとのライバル関係を受け入れ再び芸能界へと戻っていく。ギィは、そんなティエリーを変わらず迎えいれようとするのだった。
構成はさすがのうまさ。
あらすじでわかるように、トシちゃんマッチという名前は一切出てきません。そりゃまあ提携なしに商業誌に描く以上は名前、出せませんからね。トシちゃんはティエリー、マッチはギィという完全にちがう名前に変え、舞台もアメリカにしちゃいました。
その上で、短いページ数で悩める少年が旅に出、出会いと成長を経て元の居場所に帰る…シンプルな成長譚を無理なく構成しています。見事な構成力、そこらへんの萌えマンガとはレベルが段違いです。
でもあの時代やなー(´・_・`)
でもね!なんつーか「あの時代やなー」って感じがするんですよ。
そもそも80年代前半の全米ヒットチャートに少年アイドルシーンがあったとは!と無表情に驚いてしまいます(´・_・`)というか描き方が完全にザ・ベストテンなんですが…。
アイドルが「ガッツでがんばります!」とカメラに向かって舌を出す、とか色々ツッコミたいポイントは豊富ですが、ここで、この作品に登場する架空のヒット曲タイトルリストを提示します。
- グローイング・アップ
- タッチ・ダウン・フォー・ユー
- マンハッタン・パープル
- ジンジャー・マイ・ラブ
- タンゴ・イン・ザ・ムード
- ケ・セイラ・ルシー
うおー、うおー、うおー!なんなんだ、コレは(´・_・`)脳内に、MTVとザ・ベストテンがごちゃまぜになったような不可思議な世界が現出するのは、私だけでしょうか。
ここで私なんかはトシちゃんの名曲中の名曲「グッド・ラック・ラブ」なんかを思い浮かべたりなんかします。
この曲、間奏のブラスフレーズがかっこいいんですわ。
狂態!竹宮先生、ご乱心!
この作品の存在は実は竹宮恵子さんと故・中島梓さん(イコール小説家の栗本薫さん)との対談で知ったのです。で、この対談での竹宮先生の狂いっぷりがすごい。いや実のところ、作品そのものよりこの対談の方が黒歴史です。
完全に単なるジャニオタと化しています。そこらへんのジャニーズおっかけの人となんら変わりません(´・_・`)ひたすらトシちゃん天才!マッチ可愛い!で全然議論になりません。そこらへんのお兄ちゃんと変わらん、という中島梓さんの厳しいツッコミにも馬耳東風。中島センセ、完全に呆れています。
注目すべきは、トシちゃんとマッチ、いずれか。ではなく、トシちゃんもマッチも!でもなく。あくまでもトシちゃん&マッチのカップリングに萌えている点です。
-するとトシちゃんが「うん、順番ではね」って。
-健気に嫌味言ってるわけ(笑)
(中島梓「美少年学入門」より)
天真爛漫に振る舞うマッチに向かって、少しお兄さんぶるトシちゃん。みたいな姿を捉えては、そこに萌えているわけです。単に萌え狂うだけでなく、その関連性をマンガのキャラクターで再現して楽しむのです。もう、完全にそこらの腐女子の皆さんとやってること、同じやないですか(´・_・`)
前々から私がこのブログで主張していることですが、腐女子の萌えはキャラクター同士の関連性に原動力がある、ということを、レジェンド自らが実践してみせてた?わけです。
やはり、竹宮恵子さんはジャニ萌えに関してもレジェンドであり源流であった。とムリヤリ結論づけることで、竹宮先生の狂態という黒歴史につきましてはうやむやに「ここまでガッツリ書いといて、なにがうやむやだよ!(´・_・`)」
おまけ。
この作品の主人公ティエリー=トシちゃんですが、現在の田原俊彦さんの「おバカで明るい」イメージとはちがう繊細なキャラ設定です。
それを見て私の場合、ラジオびんびん物語前後の”悩めるトシちゃん”の姿を、思い出したりするんです。
当時の彼は、渋い大人のタレントへの成長を目指しながら、それがうまくいかないことに悩んでいました。苦しい胸のうちを、「明星」の記事などに素直に吐露していたのです。そんな姿に胸を打たれた記憶が鮮明にあります。そこを乗り越えての「教師びんびん物語」でのはじけっぷり、その後の快進撃、だったのです。
一方ギィ=マッチのキャラ設定にも、感慨深いものがあります。
後悔するぞ はねっ返り!
この前なんか フランク・シナトラつかまえて
”おじさんうまいね”
たぁ何だよ!
…そんな破天荒キャラのままその後も突っ走り続けて芸能界を生き抜いてきた、近藤真彦さんの数々の豪快伝説につきましては、きっと私なんかよりもそこらのジャニオタの皆さんの方が、お詳しいと存じます。
この二人をテーマにすると本当にいつまでもどこまでも書きたいことは尽きないのでございますが、本日のところはこのあたりで。
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